オリンピック陸上競技で最長距離!「競歩」ってどんな種目?


東京オリンピックで、男子は20kmと50km、女子は20kmの距離を“歩いて”競う「競歩」。日本では競技人口も少なく、なかなか注目されなかった「競歩」ですが、近年は日本人選手の活躍によりメジャーになりつつあります。今回は「競歩」ならではのルールから、知っておくと観戦が楽しくなる豆知識まで、「競歩」の魅力を紹介します。

 

2つの主なルールとは

「競歩」は、いかに速く歩いてゴールするかを競う単純なタイムレースですが、自由なフォームで走るマラソンと違い、ルールに沿った歩型(フォーム)を維持しながら歩かなければなりません。この「競歩」の一番の要ともいえる、歩型(フォーム)に関する主なルールが2つあります。

①ロス・オブ・コンタクト

常に左右どちらかの足が地面に接した状態でなければなりません。一瞬でも、両方の足が同時に地面から離れ、空中に浮いたような状態になると「ロス・オブ・コンタクト」の反則をとられます。

②ベント・ニー

前足が地面に着いた瞬間から腰の真下、つまりは地面と垂直の位置になるまでの間、膝を伸ばさなければなりません。少しでも曲がっていると判定されると「ベント・ニー」の反則をとられます。

通常の歩行や力走とは全く異なる競歩特有の歩型(フォーム)は、このようなルールを守るために生まれた歩行技術なのです。

 

失格になるのはどんなとき?

前述した①②のルールを守っているかは審判員が判断し、違反していると失格処分が下されます。何人の審判員によって判定され、どのような流れで失格となるのでしょうか。

審判員

ロード種目では主任を含め6~9人、トラック種目では主任を含め6人で審判にあたります。それぞれの審判員は、担当場所で各選手の歩型(フォーム)をチェック。主任審判員はレッドカードのとりまとめや失格の宣告のみを行ない、基本的には競技者の判定には加わりません。ただし、オリンピックや世界選手権など一定レベル以上の大会では、ラスト100mの範囲に限って判定することも。それまでに出されたレッドカードの有無や累積枚数に関わらず、主任審判員が違反していると判定した選手は即失格になります。これにより、ラストスパートの競り合いにおいて、歩型(フォーム)を乱してフィニッシュすることへの抑止へとつながっています。

失格の流れ

(1)イエローパドルの提示
審判員は選手の歩型(フォーム)を見た時に、前述した①②の違反の恐れがあると感じたら、即座にイエローパドルを選手に示して注意し、歩型(フォーム)の修正を促します。イエローパドルは2種類あり、波打つようなマークが書かれたものは①の「ロス・オブ・コンタクト」、『く』の字に似たマークが書かれたものは②の「ベント・ニー」の違反をそれぞれ表しています。1人の審判員は1人の選手に対し、①②の反則について1回ずつ提示可能。イエローパドルは何回提示されても、原則失格にはなりません。
(2)レッドカードの発行
イエローパドルの提示でも改善が見られない場合や、明らかに歩型(フォーム)違反している場合には、レッドカードが発行され、同一の選手に対して3人以上の審判員からレッドカードの提示が確認されると、その選手は失格となります。近年では、レッドカードが累積3枚になった選手はピットレーンと呼ばれる待機場所で所定の時間(大会組織員が定めた時間)待機すれば、レース復帰することができる「ピットレーン制」を採用している大会もあります。この場合は、4枚目のレッドカードで即失格となります。

 

1人の審判員は1人の選手に対して、①②どちらかの反則について1回のみ出すことが可能。どの審判員がレッドカードを出したかは、選手には知らされない仕組みになっています。フィニッシュ前の違反などで失格の宣告が間に合わず、選手が失格を知らずにフィニッシュした場合でも、レッドカードが3枚揃っていると失格となり順位が付きません。

競歩では、先着した選手の失格によって、下位でフィニッシュした選手が繰り上げになり、メダル獲得や入賞に食い込むといった順位変動も度々あります。そのため、失格にならない限り、多くの選手が完走を目指します。

 

意外と知らない「競歩」のあれこれ

まだまだ「競歩」には、知らないことがたくさんありますよね。知っておくと、より観戦が楽しめる情報をまとめてみました。

種目名

「競歩50kmw」というように、種目名は最後にW(=walk)を付けて表記します。

シューズ

「競歩」専用シューズはほとんどなく、多くの選手は通常のランニングシューズを使用します。 ただ「競歩」はランニングと違い、上に飛び上がる力を使わないため足を守るための高いクッション性は必要ありません。ソール(靴底のクッション)が厚すぎるものより、やや薄いシューズが歩きやすく、好まれる傾向にあります。

筋力

「競歩」は、②の「ベント・ニー」のルールで膝を曲げないような歩型(フォーム)のため、他種目のランナーのような太もも前側の筋肉は発達せず、逆に身体を前に押し出すための太もも裏&お尻の筋肉が鍛えられます。したがって、正面から見ると太ももは比較的細くスッキリとしていて、横から見ると太ももの厚みがあり、お尻がキュッと上がった身体になります。

レース

マラソンなどの長距離種目で、体力の消耗や身体に異変があった際は、歩いて調整した後に再び走り出すこともできます。しかし、「競歩」の場合、普通に“歩いて”しまうと、前述した②の「ベント・ニー」の反則になってしまう可能性が高いため、不用意に“歩く”ことができません。常に歩型(フォーム)を意識しながら、最後まで歩く気力と体力を持ち合わせなければならない非常に厳しい競技です。

スピード

「競歩」の男子50kmwの世界記録は3時間32分33秒(2018年9月現在)。フルマラソンの42.195kmで換算すると、約3時間でゴールしている計算になります。ちなみに市民ランナーがフルマラソンで3時間を切る(サブ3)のは上位3~6%と言われているので、いかに早く“歩いて”いるのかが分かりますよね。

 

まとめ

私たちが走るよりも速いスピードで歩く「競歩」。陸上競技で最も距離が長く、最も過酷な種目とも言われています。ストイックにただ前だけを見てひたすら歩く選手の姿とともに、選手の歩型(フォーム)や審判員出すイエローパドルに注目しながら、ぜひ観戦してみてくださいね。