指導者が身につけたい「コーチング」スキルと、6つのヒント「PATROL」


クラブチームのコーチやスポーツトレーナーといった指導者の仕事は、スポーツ選手のセカンドキャリアとして人気です。今回は、指導者が選手の可能性を引き出す際に役立つテクニックとして、「コーチング」と呼ばれるビジネスの現場で使われるコミュニケーション手法のヒントと、「PATROL(パトロール)」というキーワードをご紹介します。

 

選手に教えないのが「コーチング」?!

「コーチ」と聞いてパッと思い浮かぶのは、おそらくスポーツ選手を育てるコーチでしょう。間違ったフォームを指摘する、試合中に適格な指示を出すなど、選手個人やチームに寄り添ってアドバイスをするイメージをお持ちではないでしょうか。

ですが、人の成長を目的としたコミュニケーション手法「コーチング」においては、指導者が選手に具体的なアドバイスをすることを“良し”とはしていません。それは、答えを教え続けることで受け身になってしまい、常に指導者からのアドバイスを待つクセがつき、選手が自発的に行動しなくなってしまうからです。

 

きちんと対話して選手から答えを引き出そう

では、“教えない”コーチは選手に何をアドバイスするのでしょうか。「コーチング」の手法では、考えるきっかけを作ることが重要とされています。つまり、「なぜ上手くいかないと思う?」「このピンチはどうやってクリアしたらいいかな?」など、コーチが解決のヒントとなる質問を投げかけることで、選手の自発的な行動を引き出すのです。

直面している問題への気づきを与えることで、選手は自分で考え、解決に向け積極的に動くことができる。このような自立した考え方ができる人材は、スポーツキャリアではもちろん、引退後のセカンドキャリアでもどんどん成長することができるでしょう。

 

コーチングの3原則と必要なコミュニケーションスキルとは

■コーチングの3原則

コーチは一方的に教えこむのではなく、問いかけて気づきを与え、選手はアイデアを出し実行する。この双方向性(インタラクティブ)が「コーチングの3原則 」における1つめの原則となります。記録が伸び悩んでいる、試合で大きなミスをしたなど、起きてしまったトラブルに対して指導者の指示を待つのではなく、自ら解決策を提案できるような双方向コミュニケーションが取れるのが理想的です。

2つめの原則は、個別対応(テーラーメイド)を行うこと。マニュアル一片通りの指導を行うのではなく、選手をしっかり観察し、ひとりひとりの個性に合わせたコミュニケーションを取ることが重要です。声をかけるタイミングや誉める頻度、さらにはどんな言葉で伝えればやる気がアップするのか、相手の価値観を把握しておく必要があります。

3つめの原則である現在進行形(オンゴーイング)とは、一度伝えてそれっきりにするのではなく、成果が出るまでコミュニケーションを取り続けること。選手の状況に合わせて行動を変えるなど、軌道修正しながら進めることが大切です。

■コーチングに必要なコミュニケーションスキル

この3原則をしっかり理解したうえで、指導者は「コーチング」に必要な3つのスキル を磨く必要があります。まずは「傾聴」、五感をフル活用して話を聴きましょう。次に、上でもご紹介した「質問」、そして成長や変化を言葉にして相手に伝える「承認」、これら3つのコミュニケーションスキルを使って選手の成長を促します。

 

選手の可能性を引き出すキーワード「PATROL(パトロール)」

人を成功へと導く「コーチング」の手法は、部下を指導する管理職の支持を集め、多くのビジネス書で取り上げられるようになりました。ただ、いくつかのスキルを要したり、カタカナの聞きなれない専門用語があったりするため、少しとっつきにくく感じる方も多いようです。

そこで、より良いコーチとなるための6つのヒントが隠された「PATROL(パトロール)」というキーワードが生まれました。選手が自立(自律)し自ら進んで取り組めるよう、指導者は常に心がけましょう。

 

さあ、あなたも「PATROL」してみよう!

では、日本体育協会「21世紀のスポーツ指導者-望ましいスポーツ指導者とは-」 から、指導者が持つべき「PATROL」の心がまえをご紹介します。

 

Process(プロセス):結果ではなく、経過を重視しましょう

結果を評価するのではなく、経過を重視しましょう。どんな結果であろうとも、結果に至るまでの努力や行動があったはずです。いい結果が出た時も悪い結果が出た時も、プレーヤーと一緒に原因を考えてみましょう。

 

Acknowledgment(アクナレッジメント):承認しましょう

プレーヤーの意思を尊重し、その行動や言動を承認することが重要です。自らの存在を認められることが、プレーヤーにとって大きな励みになるのです。

 

Together(トゥギャザー):一緒に楽しみ、一緒に考えましょう

何よりも指導者自身が楽しくなければ、プレーヤーも楽しくありません。プレーヤーとともにスポーツを一緒に楽しみましょう。

 

Respect(リスペクト):尊敬しましょう、尊重しましょう

年齢、性別に関係なく、すべての人を尊敬する気持ちを持ちましょう。10人いれば10人の個が存在します。プレーヤーの個性を尊重しましょう。

 

Observation(オブサベイション):よく観察しましょう

プレーヤーをよく観察しましょう。体長は万全か、悩み事はないだろうか。見ていなければわかりません。「見られている」ことでプレーヤーは安心するのです。

 

Listening(リスニング):話をよく聴きましょう

自分が話すより、プレーヤーの話を聴く時間を多く取るように心がけましょう。指導者が「なってほしいプレーヤー」ではなく、プレーヤー自身が「なりたい」自分を意識し、気づかせるために、プレーヤー自身にたくさん話す機会を作ってあげましょう。

 

これから指導者を目指す人も、この「PATROL」を意識して選手と向き合うことで、人を育てることの素晴らしさや大きなやりがいを感じられるでしょう。

 

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まとめ

「コーチング」そして「PATROL」といったコミュニケーションの手法は、スポーツはもちろんビジネスや子育てなど、あらゆるシーンで活かすことができます。部下の可能性をもっと引き出してあげたい、自立した考えができる子に育てたい、そんな機会があればぜひ試してみましょう。

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