実は12種類もある! 知っているようで知らない「メンタル」のこと 前編


アスリートにとって、体力トレーニングと同様に欠かせないのが「メンタルトレーニング」。文字通り「メンタル」は、意識的に「トレーニング」することで向上するとされています。あらゆる競技と同じく、自分の強みをさらに伸ばし、弱さを強化するためには、「メンタル」そのものについて深く知っておくと、効率よくトレーニングを進めることができるでしょう。

 

アスリートに求められる「心理的競技能力」

はじめに考えたいのは、「メンタル(mental)」という言葉の意味について。一般的に「精神力」を意味する言葉ですが、スポーツのメンタルトレーニング研究では“アスリートに求められるスキル”の1つとして、メンタルを「心理的競技能力」と呼んでいます。 メンタルというのも、立派な“スキル・能力”のひとつ。自分の成功する姿を思い浮かべる「イメージトレーニング」や、前向きな言葉で自分を励ます「セルフトーク」に代表されるように、地道なトレーニングを続けていくことでメンタルのスキルを伸ばすことができるのです。

残念ながら、ネガティブな言葉や記憶は、メンタルに響きやすいもの。アスリートのみならず私たちは、後ろ向きな言葉やかつて失敗した時の記憶に囚われてしまいがちです。だからこそ、意識的に“前向きに物事を考える”というメンタルのスキルを伸ばし、ここぞという勝負時に実力を発揮できるよう、身体と一緒に心のトレーニングを行う必要があるのです。
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メンタルの要素は12種類に細分化することが可能

メンタルトレーニングを行うためには、何よりも自分自身をよく知ることが大切。そのうえで参考になるのが、九州大学の徳永幹雄名誉教授らによって作成された、スポーツ選手用向けの心理検査「DIPCA.3(心理的競技能力検査)」 です※。この検査は国立スポーツ科学センターの心理チェックにも用いられており、多くのトップアスリートもメンタル強化のために活用しています。またDIPCA.3は、英語・フランス語・ロシア語・中国語・台湾語・韓国語・スウェーデン語版・ポルトガル語版も用意されています。

このDIPCA.3によると、アスリートのメンタルは12の要素に分けることが可能 としています。スポーツの試合場面にまつわる52個の質問に対して答えを記入することで、12のうちどの要素が自分の強み・弱みであるのかが明確に判断できるのです。アスリートとしての心理面の長所・短所を切り分けることでトレーニングすべき要素を発見でき、より効果的なメンタルトレーニングの第一歩が踏み出せるのです。
※DIPCAとは、Diagnostic Inventory of Psychological-Competitive Ability for Athletes の略

 

メンタルを構成する12の要素とは?

DIPCA.3が示すメンタルを構成する12の要素は、5つの能力ごとにグループ分けすることができます。自分の特性と照らし合わせながら、どのような項目があるのか確認してみましょう。

(1)競技意欲:競技に対する内発的な「やる気」
①忍耐力 ②闘争心 ③自己実現意欲 ④勝利意欲

(2)精神の安定・集中:勝負時に緊張せず実力を発揮できる能力
⑤自己コントロール能力 ⑥リラックス能力 ⑦集中力

(3)自信:成功体験をかさね自分を信じる能力
⑧自信 ⑨決断力

(4)作戦能力:全体の動きをみて先読みし判断できる能力
⑩予測力 ⑪判断力

(5)協調性:人とコミュニケーションを取って支え合い、ひとつの目標に向かって動ける能力
⑫協調性

 

まとめ

「ここぞという勝負時に毎回ミスをしてしまう…」「試合が劣勢になると頭の中が真っ白に!」など、メンタルの弱さが原因で実力を出せなかったという経験は、きっと誰にでもあるはず。メンタルトレーニングに行き詰った際は、DIPCA.3といったツールを用いて「メンタル」というスキルを言語化・細分化すると、よりハッキリと自分の強みや弱みが見えてきます。後編ではメンタルを構成する12要素について詳しくご紹介しますので、そちらも一緒にチェックしてみてくださいね。