ダイエットを始める前に知っておきたい食事やトレーニングの原理


冬の間に貯めこんでしまった余分なお肉をなんとかしようと、ダイエットに取り組む方が増えてくるのが今の季節です。世間では○○ダイエット等と、様々なダイエット方法が紹介されていますが、理想的なダイエット方法とはどういうものでしょうか?

「早くこの身体をなんとかしたい」と思っている方もたくさんいると思いますが、一番難しいのはダイエット自体ではなく、「ダイエット後の身体をいかに維持していくか」にあります。今回はダイエット方法について再考してみたいと思います。

1.トレーニングの概要

「さあ、今日からダイエットだ!」と決意した時、あなたは何からはじめますか?

ヘルシーな食事で摂取カロリーをコントロールしながら運動を取り入れることがダイエットには理想的です。しかし、手っ取り早く食事を1食抜いてみたり、あるいは「炭水化物(特にご飯やパン等)は太ると聞いたので食べるのをやめておこう」と、炭水化物を摂取せずにタンパク質と脂質だけを摂取するような食事をしたりといった安易な方法には注意が必要です。

本当にこのようなダイエットで、目標を達成できるのでしょうか。

人は年を重ねるとともに、基礎代謝量が落ちてきます。特に中年以降になると男性ならポッコリお腹や、女性だと背中や二の腕、あるいはお尻のたるみ等が気になりはじめます。
太ったり、肉がたるんだりしてくる原因は何なのでしょう?

 

その大きな要因の一つに筋肉量の減少が挙げられます。もちろん、年を取るとともに身体活動量が減ってくるため、筋肉量の減少に相まって太ってきたりするわけですが、筋肉は糖質(グルコース)をエネルギー源とするため、自身の筋肉量が増えれば増えるほど基礎代謝量が上がり、カロリーを消費しやすい身体になります。

誰でもそうだと思いますが、すばらしい身体を手に入れたとしても、それが「期間限定」という条件付きだったらどうでしょう。嫌ですよね。
ダイエットの本当の難しさは、ダイエット自体にあるのではなく、「シェイプアップされた身体をいかに維持するか」にかかっています。前述したように、何もしなければ必ず筋肉は落ちていきます。体型の維持には食事のコントロールも必要ですが、運動が不可欠であるとともに、筋肉量を増やすことがその一助になることを覚えておきましょう。

2.炭水化物摂取の重要性について

一時期、炭水化物を控えるダイエットが世間で注目を浴びたこともあり、ダイエット時にはできるだけ炭水化物の摂取を避けたほうがよいというイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、糖尿病などの医学的見地から食事のコントロールが必要な方を除き、健康な方が糖質を控えることが本当にダイエットによいのでしょうか。

前回の記事で、5大栄養素について少し触れましたが、これら栄養素の中で、炭水化物に関しては、直接エネルギーとして利用できる部分(糖質)と直接のエネルギーとして利用できない部分(食物繊維)があります。さらに糖質にはそのまま小腸で吸収できるグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果物)、ガラクトース等の単糖類と、スクロース(ショ糖)、マルトース(麦芽糖)、ラクトース(乳糖)などの二糖類、でんぷんやグリコーゲン等の多糖類があり体内への吸収される時間等がそれぞれで異なります。

まず、糖質の多くは体内で消化され、単糖類となって小腸で吸収されます。吸収された単糖類は肝臓に入り、一部は肝臓のグリコーゲンとして蓄えられ、肝臓を通過したものはブドウ糖(グルコース)になって血液中に放出されます。そして、血液中に放出されたグルコースは、脳や筋肉等のエネルギー源として必要な分だけ使われます。そこで余ったグルコースは、飢餓状態などの時に備えて中性脂肪として身体に蓄えられます。つまり、糖質は摂取した分量をきちんと消費するか、必要量以上に摂り過ぎなければ、体内に余分な脂肪として蓄積されることはないということです。

ちなみに、人間の身体の臓器はグルコースを最も重要なエネルギー源として使用しているのですが、実際には脂質やタンパク質もエネルギー源として使用しています。しかし、脳だけは例外で、グルコース以外のものは受け付けません。なお脳の重さは人間の場合、約1400gと体重の2%を占めるに過ぎないにも関わらず比較的大量のエネルギーを消費することが分かっています。
ちなみに、体重70kgで基礎代謝量が1700kcal/日の男性の基礎代謝量を臓器・組織別にみたデータによると、脳は1日に340kcal消費することが分かっており、1日に370kcal消費する骨格筋および360kcal消費する肝臓に次いで多いことが分かります。

引用元:e-ヘルスネット 表2: ヒトの臓器・組織における安静時代謝量[2]

つまり、脳は身体の中で比較的小さな臓器であるにも関わらず大量のグルコースを必要とするわけです。朝食を食べずに学校に行って、授業に集中できなくなってきている児童が増えてきているというようなことをテレビ等でコメンテーターが話しているのを聞きますが、朝食を食べないと脳への栄養供給が断たれたままになっている状態なので脳が働かないのは当たり前のことですよね。
したがって、炭水化物は必要以上に摂り過ぎない、あるいは摂取した分消費すれば太らないということを念頭に入れて、スマートにダイエットに取り組みたいですね。

3.リバウンドを防いで質の高いダイエットを考える

糖質を極端に制限した食事を続けていると、脳が「糖質不足」という危険信号を発令し、他の臓器からグルコースを合成してエネルギーに換えようとする働きが活性化します。つまり、自身の肝臓や筋肉に貯めこんだグリコーゲンを糖質に変えて脳に送り込むという代償作用が起こります。

筋肉(タンパク質)をアミノ酸に分解してそれをエネルギーに変えることを糖新生といいますが、糖新生が起こると、筋肉がどんどん少なくなっていき、脂肪だけが残ってしまうので、後々リバウンドを引き起こす引き金になってしまいます。これはダイエットをしている人にとっては最も避けたいことです。

気をつけなければいけないことは、健康な人が炭水化物を極端に控えるダイエット方法を取り入れ、「体重が減った」と言って喜んでいても、その効果はあくまでも一過性のもので、実際に減っているのは水分と筋肉が大半を占めているということを覚えておきましょう。

引用元:ワニブックスPLUS新書「定年筋トレ」より

では質の高いダイエットを行う際に最も重点を置くことは、出来るだけ筋量を残しつつ、いかにして脂肪を落とすかを考えることです。つまり、本当の意味で身体を絞る(シェイプアップ)ということは、除脂肪体重(体脂肪以外の筋肉や骨、内臓等の総重量のこと)を出来るだけキープしながら、内臓脂肪や皮下脂肪を落とすことです。

このようなダイエットを取り入れるには、男性も女性も筋力トレーニングが必須になります。筋力トレーニングを取り入れたダイエットは、男性であれば、筋力の向上だけでなく見た目も引き締まった身体を獲得することができ、女性であれば、締まるところは締まり、出るところは出るといったメリハリのあるプロポーションになれます。つまり、筋トレはダイエットにも身体作りにも理想的なトレーニングといえるでしょう。
ただ、理想的な身体は一朝一夕で手に入れられるものではないので、継続することが重要です。まずは、自分に出来ることから少しずつはじめてみましょう。

 

まとめ

人によって、ダイエットに対する意識や考え方は様々で、美に対する価値観等も違うことから、一概にこれが最適というベストエクササイズや方法論はありません。しかしながら、男性も女性もある程度筋肉がなければ良いプロポーションにはなれません。世間には様々なトレーニング法を紹介した雑誌や書籍が流通していますが、流行に流されず、今の自分に合っているもの、本当に必要としているものを選択することが重要です。

ライタープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター マネージャー
木須 久智 (きす ひさとも)

筑波大学大学院体育研究科修了、専門は運動生化学。「レジスタンス運動における内分泌応答と眼圧の関係について研究を行う」。修了後は医療福祉系専門学校の非常勤講師およびフリーランスのパーソナルトレーナーとして活動。2009年4月にNSCAジャパン事務局に入局、同事務局では試験、会員管理、広報等、各部署を担当し、2017年4月からNSCAジャパンヒューマンパフォーマンスセンターの施設長を務める。
資格:CSCS, NSCA-CPT
一言:筋トレを通じて健全なココロとカラダを手に入れましょう!

 

トレーナープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター ディレクター
ヘッドS&Cコーチ
吉田 直人 (よしだ なおと)

中央大学経済学部卒業後、一度は金融業に就職するも、トレーナーの道を選ぶ。ウイダートレーニングラボヘッドS&Cコーチとして、育成年代からプロ選手まであらゆる競技のアスリートを指導したほか、ビーチバレーの草野選手や、ミス・ユニバース・ジャパンのモデルらの身体作りにも従事。その後、ジャパンラグビートップリーグHonda HEATヘッドS&Cコーチとして5年間従事し、2017年4月よりNSCAジャパンヒューマンパフォーマンセンターヘッドS&Cコーチを務める。
資格:CSCS,NSCA-CPT

 

 

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