身体づくりに必要な3要素「トレーニング」「休養」「栄養」


身体づくりには、トレーニング・休養・栄養の3つのバランスが重要になります。これら3つの要素のうち、どれかひとつでも欠けていると思うような結果が出ません。今回は身体づくりに欠かすことのできないこれら3要素について紹介します。

「トレーニング」「休養」「栄養」の3つのバランスを考える

ここ数年シェイプアップやダイエット目的で、筋トレを実践する方が増えてきました。実際芸能界でも、お笑い芸人の方から俳優さんに至るまで多くの方が筋トレを実践しています。
10年、20年前であれば、アスリート以外で筋トレを真剣に行うのは、「筋トレマニア」の人というイメージがありました。もちろん、今でも筋トレをしている人に対してこのような印象をお持ちの方もいるでしょうが、当時から比べると筋トレのイメージは大きく変わってきたと思います。

一昔前のダイエットやシェイプアップというと、「単純に体重を落として痩せれば良い」という体重重視の考え方が主流だったのに対し、昨今では欧米文化が浸透してきたこともあり、メリハリのある身体や、ある程度筋肉がついた身体を理想的だとする考え方に変化しつつあるように感じます。
とはいえ、筋トレをやればやった分だけ身体を変えられるのか、というとそう単純なものではありません。

身体をコンスタントに成長させていくには「トレーニングの継続」と「適切な休養」、そして「栄養をしっかり摂ること」が重要になります。今回は、身体づくりになぜこれら3つのバランスが重要なのか、詳しくみていきたいと思います。

1. トレーニングについて

 

オーバートレーニングに注意!

筋トレ初心者のうちは、早く成果を出したいために毎日トレーニングしたり、あるいは1回のトレーニング量を極端に増やしたりする方がいると思います。
しかし、筋トレ自体は、身体に力学的ストレスをかける行為で、筋トレ中は自身の筋肉を壊しているときでもあります。必要以上の負荷をかけたり、身体が十分に回復する前に次のトレーニングを開始したりと、無理な負荷を身体にかけてしまうと、身体の免疫機能が落ちて、風邪をひきやすくなったり、オーバーユース(使い過ぎ症候群)で身体の一部が故障しやすくなったりします。

これは身体が超回復できていないことが原因であり、このような徴候を見過ごしてトレーニングを続けていると、オーバートレーニングになってしまいます。オーバートレーニングになると、安静時の心拍数や血圧が上昇したり、いくら休んでも全身の倦怠感が取れなくなったりします。ひどい場合は身体がストレスに耐えられなくなり病気になってしまうケースもあるので、オーバートレーニングの徴候が現れたら、思い切ってトレーニングを休む勇気を持つことが重要です。

トレーニング後の「超回復」を活かす

さて、ここで超回復という言葉が出てきましたが、超回復とはどういう意味でしょう。
新トレーニング用語辞典(森永製菓株式会社発行)によれば、「トレーニング×休息×栄養の3つのバランスが守られていれば、(トレーニング後に)以前よりも生体機能が高い水準まで引き上げられる現象がおこる。この現象を超回復という」と記載されています。

ちなみに、筋力トレーニングの場合、超回復を起こすまでに48時間~72時間の休息が必要だと言われていますが、これはあくまでも一般的な目安であって絶対ではありません。トレーニング強度が高い場合、もしくは量が多い場合等は回復にそれ以上の時間がかかります。また個々の体力レベルや仕事環境(デスクワークか肉体労働か等)の違いによっても回復時間が大きく変わってきます。
例えば、日々肉体労働をしている方は、デスクワークの方に比べると、仕事中の筋力発揮の度合いや消費エネルギーは大きくなります。仕事での肉体疲労に加えて、さらに筋トレを行うことになれば、デスクワークの方が筋トレをした場合よりも、回復に多くの時間を要するのです。自分の置かれている環境に合わせて、休養に費やす時間を増減させると良いでしょう。

身体を成長させるためにトレーニングは不可欠ですが、身体が成長するのはトレーニング中ではなく、回復中に起こるということを覚えておきましょう。

2. 休養について

筋トレによって壊された筋線維を修復したり、疲労した身体を回復させたりするためには、十分な休養(特に睡眠)を取ることがとても重要になります。

筋肉も「寝かせれば育つ」!?

「寝る子は育つ」とよく言いますが、これは本当の話です。睡眠中、特にノンレム睡眠(深い睡眠)時に成長ホルモンが分泌されると言われていますが、成長ホルモンは、身体の成長はもちろんのこと、壊れた筋の修復にも大きく関与しているので、筋トレ実践者は睡眠を軽視することはできません。

ちなみに、日本疲労学会によると、「疲労とは過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態である」と定義され、さらに疲労は「心身への過負荷により生じた活動能力の低下を言い、思考能力の低下や刺激に対する反応の低下、注意力の低下、注意散漫、動作緩慢、行動量の低下、眼のかすみ、頭痛、肩こり、腰痛などがみられる」とされています。

引用元:日本疲労学会 疲労臨床評価ガイドライン P4 から引用

疲労と腰痛の意外な関係

ここで興味深いことは、疲労と腰痛の関係です。一般的に腰痛の原因は、姿勢の悪さや、過度に重いものを持ち過ぎる等、身体的な負担や負荷等が原因と思われがちですが、病棟勤務看護師の腰痛の実態を調査した報告書によると、「中腰・前かがみ姿勢で1日4時間以上従事」、「腰の捻じり動作」等の身体的負荷以外にも「休憩場所が不十分」、あるいは「働きがいが低い」といった社会心理的要因と腰痛の関係も有意であったことが報告されています。

つまり、腰痛の原因を単純に姿勢や運動のせいだと決めつけてはだめで、個々の日常生活におけるバックグラウンド(職場における精神的ストレスの有無等)も考慮しなければいけないということです。

トレーニングのところで、超回復について触れましたが、このように個々の仕事によっても疲労に影響する因子が様々なので、自身の生活環境と、トレーニング強度・量・頻度等を照らし合わせながら、自分に見合った休養をとるように心がけましょう。

3. 栄養について

数多くの健康食品やダイエットサプリメント等が溢れかえっている昨今ですが、身体にとって本当に重要な栄養素とは何なのでしょう。

本当に必要な栄養素とは?

まずは三大栄養素となる、タンパク質、脂質、炭水化物を基本と考え、さらにビタミン、ミネラル、食物繊維を合わせて六大栄養素を摂取することが重要であると最初のコラムでお伝えしていますが、皆さんはこれらの栄養素をバランスよく摂取できているでしょうか。

飽食の時代と言われる現代では、3食のおかずやご飯はもちろんのこと、スナック菓子からサプリメント等に至るまであらゆる種類の食品や食材が簡単に手に入ります。

皆さんも経験があると思いますが、TVの健康情報番組等で「○○の食品が、○○の症状を改善する」といった内容が放送されると、翌日はその食材がスーパーで売り切れているといった現象がしばしば起こります。確かに身体には良い食品なのでしょうが、本当にその食材は自身にとって必要な物なのでしょうか。

「特定保健用食品」に必要以上にこだわる人がいたり、ひどい場合は好きなお菓子やデザートを食べるために、3食の食事の内の一食を抜いたりする人もいます。もちろん好きでやっているので、他人がどうこう言う事ではありませんが、身体作りという目標がある人は、このような栄養の取り方では本末転倒になってしまいます。

したがって「TV等で○○が良いと言ってから」とか「特保だから良い」という考えではなく、今の自分に必要な栄養素は何か?あるいは不足している栄養は何か?を考えることが重要です。

人によって、吸収できる栄養素は異なる

ただ、食品から吸収される栄養素の吸収率に関しては、年齢、性別、人種、あるいは他の食品との食べ合わせ等で差が出ます。食品に含まれる栄養素や成分表を気にする人もいますが、同じものを食べても10人が10人同じように栄養素を吸収できるわけではありません。

例えば同じものを食べてもAさんはしっかりと栄養素として吸収されるのに対し、Bさんは消化不良を起こして下痢になってしまう等です。この辺は個々の腸内環境等にも影響される部分なので、何を何ミリグラム摂れば良い等、あまり神経質になり過ぎる必要はなく、食事全体として6大栄養素をバランス良く摂取できように組み立てれば良いと思います。

ちなみに、私たちが普段よく食べている海苔を消化できる酵素を持つのは日本人だけだと言われているのを知っているでしょうか。

日本人の腸が海草に含まれる多糖類を分解できるのは、分解酵素を作る遺伝子を腸内に住む細菌が海洋性の微生物から取り込んでいるためだとする論文が2010年の英科学誌のNatureに掲載されています。

参考文献:【Nature】Transfer of carbohydrate-active enzymes from marine bacteria to Japanese gut microbiota

論文によると、フランスの海洋生物学と海洋学の研究・教育機関の研究チームは、ゾベリア・ガラクタニボラン(Zobellia Galactanivorans)という海洋性バクテリアが、アマノリ属の海草に含まれる多糖類を分解する酵素を持っていると発見したとのこと。そして公開されているDNAを調べたところ、ヒトの腸内に住むバクテロイデス・プレビウス(Bacteroides pLebeius)という微生物が、同じ酵素を作る遺伝子を持っていることが分かり、このバクテリアはこれまで、日本人の排泄物からしか見つかっていないとのことです。

日本人は8世紀にはすでに海苔を食べていたようで、かつ海苔を焼かずに生で食べていたため海草に住み着いていたバクテリアからこの遺伝子を取り込んだものと推定されています。

海苔はビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な栄養素として知られていますが、上記のように栄養に富んだ食材でも人種によっては消化吸収できないものもあるため、細かい部分に関してはあまり神経質になり過ぎず、基本は三大栄養素をしっかり摂りつつ、不足分をプロテインや、ビタミン・ミネラル等のサプリメントで補うように考えれば良いと思います。

 

まとめ

身体づくりに必要な3要素について解説してきましたが、忙しく働いている現代人にとってこの3つのバランスをとることは結構難しいことだと思います。特に独身の方等は、トレーニングと休養の部分はなんとか調整できても、食事に関しては作る暇がなく、外食がメインになることも多いと思います。

ただ、独身の方でも、真剣に身体作りに取り組んでいる方や競技ボディビルダー等は、ある程度作り置きが可能な食材を自ら調理して冷凍しておき、必要な時に食べるといった事を行っています。このような工夫を行うだけでも毎回コンビニ弁当や外食の食事パターンを改善することができます。ちょっとしたことですが、長い目でみると大きな開きがでてきますので、食事等で悩んでいる方は試してみてはいかがでしょう。

ライタープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター マネージャー
木須 久智 (きす ひさとも)

筑波大学大学院体育研究科修了、専門は運動生化学。「レジスタンス運動における内分泌応答と眼圧の関係について研究を行う」。修了後は医療福祉系専門学校の非常勤講師およびフリーランスのパーソナルトレーナーとして活動。2009年4月にNSCAジャパン事務局に入局、同事務局では試験、会員管理、広報等、各部署を担当し、2017年4月からNSCAジャパンヒューマンパフォーマンスセンターの施設長を務める。
資格:CSCS, NSCA-CPT
一言:筋トレを通じて健全なココロとカラダを手に入れましょう!

 

トレーナープロフィール

特定非営利活動法人 NSCAジャパン
ヒューマンパフォーマンスセンター ディレクター
ヘッドS&Cコーチ
吉田 直人 (よしだ なおと)

中央大学経済学部卒業後、一度は金融業に就職するも、トレーナーの道を選ぶ。ウイダートレーニングラボヘッドS&Cコーチとして、育成年代からプロ選手まであらゆる競技のアスリートを指導したほか、ビーチバレーの草野選手や、ミス・ユニバース・ジャパンのモデルらの身体作りにも従事。その後、ジャパンラグビートップリーグHonda HEATヘッドS&Cコーチとして5年間従事し、2017年4月よりNSCAジャパンヒューマンパフォーマンセンターヘッドS&Cコーチを務める。
資格:CSCS,NSCA-CPT

 

 

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